世界初のAMPA−PET薬剤を世界に届けます。
AMPA-PETとは
AMPA受容体は、脳や中枢神経におけるグルタミン酸受容体の一つで、記憶や学習に深く関係しており、てんかん、統合失調症、うつ病、双極性障害など、多くの神経・精神疾患とも関連していることが示唆されてきました。しかし、神経・精神疾患患者の脳内のAMPA受容体が実際増えているのか、減っているのか、どのように分布しているのか? その疑問に応える技術はこれまで存在しませんでした。
そのため、疾患とAMPA受容体の関係について、ヒトでの研究はなかなか進まず、AMPA受容体を標的とした治療薬の開発も進みませんでした。
こうした状況の中、私たちは、ヒト生体のAMPA受容体をうまく描出できる専用のPET薬剤『[11C]K-2』を開発しました。現在、これを用いた多くの臨床研究が行われており、AMPA受容体と疾患の関係性が少しずつ明らかになってきています。
AMPA−PET薬剤の開発
AMPA-PET技術は多くの神経・精神疾患の診断や、創薬開発に活用できると考えていますが、その一つとして、私たちはてんかんの焦点診断として現在開発を進めています。
てんかんは日本人だけでも100万人が罹患しているとされており、その3分の1程度の患者さんでは、薬剤で発作がなかなか制御ができない「難治性てんかん」です。こうした難治性てんかんの患者さんの治療法として、てんかんの原因となっている脳領域(焦点)を切除する「外科的治療法」があります。この手術を行うと多くの方が発作が消失、あるいは低減します。しかし、この手術を受けるためには、多くの検査が必要で、時間もかかり、患者さんに大きな負担がかかります。
AMPA-PETはこのてんかんの外科的治療を行う際に、てんかん焦点の場所を、より早く、より正確に診断することができると考え、現在、医師主導治験の第II相試験を行っています。

[11C]K-2の自動合成装置(医療機器)の開発
このPET薬剤に用いられてる放射性同位元素11Cは寿命が短い(半減期:約20分)ため、病院内に設置されたサイクロトロンで放射性同位元素を製造し、それを化合物と合成(院内製造)し、品質検査の後、直ちに使用します。この際に用いられるのが自動合成装置と呼ばれるもので、日本では医療機器として承認を受ける必要があり、この合成装置の承認を目指して医師主導治験第II相を行っています。
[18F]K-X薬剤の開発
一方、FDGなど、現在普及している多くのPET薬剤は放射性同位元素18Fで標識されたものです。18Fは寿命がやや長く(半減期:約110分)、放射性医薬品メーカーの工場で製造し、病院に配送することができるためです。私たちは18Fで標識されたAMPA−PET薬剤の開発を現在すすめており、近いうちに臨床試験を開始する予定です。
AMPA受容体活性化薬の開発
AMPA-PET薬剤の関連化合物の中には、AMPA受容体を活性化する作用があることも見出しています。現在、関連化合物をスクリーニングし、AMPA受容体活性化薬としての上市を目指しています。
AMPA-PETを用いることで、対象患者を選定したり、その効果を判定することも可能です。私たちはこのアドバンテージを最大限に生かして、開発を行って参ります。